日本時間6月30日(日)午前7時(メインは11時ごろから)に開催されるUFC303。
もともとはUFCのスーパースター、コナー・マクレガーの3年ぶりの試合がメインイベントに予定されていましたが、マクレガーの怪我により中止。
その代わりにメインイベントに設定されたのが、アレックス・ペレイラとイリー・プロハースカのライトヘビー級タイトルマッチです。この二人は一度対戦しており、その時はペレイラのKO勝ち。今回が2度目の対戦です。
マクレガーの欠場は残念ですが、ペレイラとイリーの再戦は楽しみな人も多いはず。
この記事では、そんなアレックス・ペレイラvsイリー・プロハースカの試合がより楽しめるよう、見所解説と勝敗予想をしていきたいと思います。
(ちなみに、この大会の2試合目では日本の鶴屋怜選手が出場します。鶴屋選手vsヘルナンデスの記事はこちらから。)
選手紹介
まずは両選手のプロフィールから。
アレックス・ペレイラ
- 身長193cm
- リーチ200cm
- 36歳
- 12戦10勝(8KO)2敗
- 現UFC世界ライトヘビー級王者
- 元UFC世界ライトヘビー級王者
- 元GLORY世界ミドル級、ライトヘビー級2階級制覇王者
- SNSのリンク: X, Instagram, Youtube
経歴
ペレイラは「石の拳」の異名を持つブラジル出身の元キックボクサー。こちらの記事でも紹介しています。
ブラジルの貧民街に生まれたペレイラは、家計を支えるため12歳で中学校を中退し働き始めます。そこで同僚と一緒にアルコールに溺れ、16歳の頃には深刻なアルコール依存症になってしまいます。
依存症を克服するために、22歳で気持ちを新たにキックボクシングを始め、すぐにその才能を開花。1年でブラジルのアマチュア王者となりました。
この時、自身の格闘家としてのキャリアを意識するようになったペレイラは、アルコールをやめることを決意。これ以来一滴も飲んでいないそうです。
2010年、23歳でプロキックボクシングデビューを果たすと、その破壊的なパンチ力で快進撃を続け、当時世界最大のキックボクシング団体であるGLORYに参戦します。
GLORYデビュー戦で、現在ではペレイラの代名詞ともなっている左フックで衝撃のKO勝利を飾ると、2016年に宿敵イスラエル・アデサニヤ(元UFCミドル級王者)と対戦。この支配は疑問の残る判定でペレイラの判定勝利となりました。
翌年のアデサニヤとの再戦では、2Rにスタンディングダウンを奪われるなど劣勢だったものの、3Rに左フックで逆転KO勝利。対アデサニヤの戦績を2勝0敗とします。これを最後にアデサニヤはキックボクシングをやめ、完全に総合格闘技に転向します。
ペレイラの勢いはその後も止まらず、GLORYミドル級タイトルを獲得。5度の防衛に成功しています。
ライトヘビー級に階級を上げると、初戦でまたしも左フックによるKO勝利。ライトヘビー級暫定タイトルを獲得し、その後の正規王者との統一戦でも勝利。GLORY史上初の2階級同時制覇王者となります。
しかし、元正規王者との再戦で敗れてしまい、これを最後にキックボクシングを離れ総合格闘技に完全転向。2021年、UFCに参戦します。
当時、アデサニヤはUFCミドル級の絶対王者として君臨しており、そのアデサニヤにキックボクシングで2度勝利した男として、ペレイラには注目が集まっていました。
UFCデビュー戦を飛び膝蹴りによるKO勝利で飾り、続く2戦目も判定勝ちを収めると、3戦目で当時ミドル級ランキング4位、のちにミドル級王者となるショーン・ストリックランドと対戦。
トラッシュトークでここ最近日本でも少しずつ人気が出てきているストリックランドですが、その実力は本物。特に顔面へのディフェンスに非常に優れた選手ですが、ペレイラは得意の左フックからの右ストレートで1RKO勝利。パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得します。
2022年11月、ペレイラはアデサニヤの持つUFCミドル級のベルトにUFC4戦目で挑戦。これがキックボクシング時代から合わせて二人の3度目の対戦となります。当時アデサニヤはUFCミドル級のベルトを5度防衛中。この試合もMMAでの経験に勝るアデサニヤ有利とみられていました。
試合は戦前の予想通りアデサニヤが優勢に進め、4R終了時点で3-1でアデサニヤが勝っていました。ペレイラが勝つには最終5RでのKO勝ちしかないという状況の中、試合残り3分、ペレイラは得意の左フックを効かせ、その後パンチ連打で逆転KO勝利。3度目の対戦もペレイラが勝利し、UFCミドル級王者となりました。
しかしその後のアデサニヤとのダイレクトリマッチで2RKO負け。(この試合はこちらの記事でも紹介しています。)減量苦だったペレイラは、この試合を最後にライトヘビー級に階級を上げます。
ライトヘビー級転向初戦で、元王者のヤン・ブラホビッチと対戦。接戦をモノにし、2-1の判定勝ちをおさめます。
続く2戦目で、当時空位だったライトヘビー級王座をかけて元王者のイリー・プロハースカと対戦。2Rに前進してきたイリーに見事に左フックを合わせ、その後肘打ちの連打でKO勝利。ライトヘビー級でもタイトルを獲得し、UFC参戦からわずか7戦で2階級制覇王者となります。(2階級制覇はUFC史上9人目。ミドル級とライトヘビー級の2階級制覇はUFC初)
先日行われたUFC300ではメインカードとして元王者のジャマール・ヒルと対戦。これも左フックでダウンを奪い、1RKO勝ちで防衛に成功します。
こうしてみると、キックボクシング、MMAそれぞれの最高峰の団体で2階級制覇を成し遂げているというとてつもない経歴ですね。今回の試合はライトヘビー級タイトル2度目の防衛戦。そして前回勝利しているイリーとの再戦です。
特徴
最大の特徴は、なんといってもあの左フックです。
手を若干下げた構えから、力みのないフォームから放たれる左フックは、当たると一撃で相手をマットに沈めます。モーションが少ないだけでなく、ロングレンジでもショートレンジでも打てるのが強みですね。UFCで勝利した7戦中4戦でこの左フックが決定打となりKO勝ちをおさめています。
打撃が強い選手はたくさんいますが、ここまで突出した必殺技を持っている選手は見当たりません。個人的にはミルコ・クロコップの左ハイキック以来の一撃必殺感があり、見ていてワクワクします。
ペレイラはパンチ力に目が行きがちですが、右のカーフキックも非常に強力です。ほぼノーモーションで的確に蹴ってきます。この右のカーフキックで散らしながら相手が嫌がったところに左フックを当てるというのがペレイラの必勝パターンですね。
↓ペレイラvsイリー1戦目
↓ペレイラvsストリックランド
イリー・プロハースカ
- 身長193cm
- リーチ203cm
- 31歳
- 35戦30勝(26KO 3SUB)4敗1分
- 現UFC世界ライトヘビー級ランキング1位
- 元UFC世界ライトヘビー級王者
- 元RIZINライトヘビー級王者
- SNSのリンク: X, Instagram, Youtube
経歴
イリー・プロハースカは大和魂を持つチェコ出身のMMAファイター。RIZINにも参戦していたことから、日本での人気も高いです。
イリーは10代の頃は喧嘩に明け暮れ、溜まったエネルギーをストリートファイトで発散させていました。高校入学前に、友人から当時活躍していたミルコ・クロコップ、ヒョードルなどのビデオを見せられたことがきっかけで格闘技に興味を持ち、地元にムエタイジムに通い始めます。
2012年にMMAプロデビューを果たすと、2013年には飛び膝蹴りによる衝撃的なKOでチェコローカル団体のライトヘビー級王座を獲得します。
2015年12月にRIZIN参戦。RIZINヘビー級3DAYSトーナメントに出場したイリーは、1回戦で元柔道金メダリストの石井慧と対戦。当時無名で全く注目されていなかったイリーでしたが、強烈なハイキックと追撃の膝蹴りで1RKO勝利をおさめ、注目を集めました。
準決勝では、のちにBellatorライトヘビー級王者となるワジム・ネムコフと対戦。この試合はネムコフが1R終了時に棄権し、イリーは決勝に進みました。
決勝ではキング・モーと対戦し、1Rに強烈な右のパンチをもらってしまい無念のKO負け。優勝を逃してしまいます。
その後、怪我でブランクが空いた期間もありましたがRIZINで連勝を重ね、キング・モーとの再戦にもKOで勝利しRIZINライトヘビー級王者となります。
防衛戦でも勝利をおさめると、RIZINのベルトを返上しUFCへの参戦を発表。(先日UFC参戦を発表した朝倉海選手と同じですね。こちらの記事で海選手のUFC参戦について書いています)
UFCデビュー戦でいきなりライトヘビー級ランキング7位のヴォルカン・オーズデミアとマッチメイクされます。UFCから相当期待されていることがわかるマッチメイクですが、イリーはその期待に応え、壮絶な撃ち合いを制し2RKO勝利をおさめました。
2021年5月、UFC2戦目ではライトヘビー級ランキング3位のドミニク・レイエスと対戦。レイエスは当時絶対王者だったジョン・ジョーンズを最も苦しめた男であり、階級屈指の実力者でした。イリーは、この試合でも激しい撃ち合いに勝ち、最後にはバックスピンエルボーを直撃させて2RKO勝ち。
この衝撃的な勝ち方が評価されたイリーは、UFCわずか3戦目でタイトル挑戦の権利が与えられます。相手は大ベテランのグローバー・テイシェイラ。(ちなみにテイシェイラはブラジル人で、ペレイラと一緒にトレーニングをしています)
この試合は個人的に2022年ベストバウトに選びたいほどの一進一退の大激闘となりました。寝技ではテイシェイラ、打撃ではイリー優勢で、判定ではテイシェイラ有利に進んでいましたが、5R残り30秒でまさかのイリーがテイシェイラを極めて逆転1本勝ち。RIZINに続きUFCでもライトヘビー級王者に輝きます。
しかしその後、右肩の怪我で長期欠場。UFCのベルトも返上してしまいました。
昨年2023年11月、1年5ヶ月ぶりに復帰したイリーは、ライトヘビー級王座決定戦としてランキング3位のペレイラと対戦。前述した通りこの試合はペレイラにKOで敗れてしまい、王座に返り咲くことはできませんでした。
直近ではUFC300にて、ランキング5位のアレクサンダル・ラキッチと対戦。またもやカーフキックを効かされるものの、強烈なパンチを当てて盛り返し2Rで逆転KO勝ち。勢いを取り戻し、ペレイラとの再戦に臨みます。
特徴
特徴はなんといってもあの独特なファイトスタイル。
両手を完全に下げ、スイッチを繰り返し、予測のつかない軌道で打撃を放ってきます。自分の攻撃力と打たれ強さに自信があるからこそできる唯一無二のファイトスタイルです。
劣勢に追い込まれてからの逆転勝利が多く、さらに30勝中29フィニッシュとフィニッシュ率も高いのでUFC初心者にオススメしたいファイターの一人でもあります。本当に見ていて楽しいです。
また、イリーは「五輪書」を愛読書としており、宮本武蔵を崇拝するなど日本人の武道家よりも日本人らしい武士の心を持っています。普段はガスも水道もない人里離れた山奥で暮らし、木を殴る部位鍛錬など謎のトレーニングを積み重ねるイリー。かなりの変人ですが一度その魅力にハマれば抜け出せないこと間違いなしです。
↓大激闘となったテイシェイラ戦
↓前回のラキッチ戦。劣勢からの逆転。いつものイリー劇場でした
↓試合動画ではありませんが、イリーの日本愛が伝わってきて面白いです
アレックス・ペレイラvsイリー・プロハースカ 見所解説
ペレイラのカーフキックvsイリーのカーフキック対策
さて、この試合の見どころですが、まずはイリーがどこまでカーフキック対策をできているか、に注目です。
ペレイラとの1戦目ではカーフキックを何発もまともにもらい、体勢を崩される場面もありました。それもあって、予定より早くタックルに入ったのではないかなと思っています。
また、イリーは前回のラキッチ戦でも、この反省を全く活かさず、いつも通りの戦い方でラキッチに何度もカーフキックを入れられ、効かされていました。
これを踏まえ、今回の試合ではカーフキック対策をしてくるのかどうか。前回同様カーフキックをもらうようだと、厳しい戦いを強いられることになりそうです。
今回は2週間前に急遽決まった試合な上に、イリーの性格上、何も対策をせずそのままのファイトスタイルで挑む可能性も高いと思っていますが、ペレイラのカーフにどう対応するのかが一つ目の見どころです。
おそらく何度か構えをスイッチしてダメージを逃してくると思いますが、個人的にはカーフキックに合わせてのテイクダウンが見たいことろ。果たしてどうなるか。
ペレイラのテイクダウンディフェンスvsイリーのテイクダウン
次に注目したいのは、ペレイラのテイクダウンディフェンスとイリーのテイクダウンどちらが勝るか?です。
イリーはおそらく前回同様、組みを混ぜながら戦うでしょう。というか、純粋な打撃勝負だと部が悪いと思います。そこで、グラップラーではないイリーが、テイクダウンディフェンスの強いペレイラを倒せるのか。
簡単に倒すことができるなら、組みでも打撃でも戦えるイリー優勢で試合が進んでいくでしょうし、逆に倒せないならペレイラ優勢で試合が進んでいくでしょう。倒せたとしても、テイクダウンでかなり体力を消耗してしまう可能性も考えられます。
また、前戦1Rでペレイラをテイクダウンした際、イリーはペレイラに組み手争いでやられて上からあまり有効打を当てられていませんでした。今回も同じような展開になった時に、上から頑張ってパウンドを狙うのか、それともパスガードして寝技の展開に持ち込むのかにも注目です。
個人的には、パウンドや上からの肘打ちに固執せず、パスガードから有利なポジションに移行してしっかり固めていってほしいところですが、イリーはあまりそういうことはやらなそうですね…。
ペレイラの悪魔の左フックvsイリー劇場
最後の注目ポイントは、ペレイラの悪魔の左フックvsイリー劇場です。
ここまでいろいろと書きましたが、結局のところペレイラの理不尽な左フックと、イリーの理不尽な逆転劇、どちらの理不尽さが勝つか?の戦いだと思っています。
前戦は、徐々にイリーのペースになってきたところにペレイラの左フックが入りKOとなりましたが、今回はどうなるのか。
前回の試合は、ストップが早かったのではないか?との声もかなり上がっているので、レフェリーが誰かによっても勝敗が分かれそうです。
お互い一瞬で試合を終わらせてしまうフィニッシュ力を持っているので、最後の最後まで目が離せません。
アレックス・ペレイラvsイリー・プロハースカのオッズは?
ペレイラvsイリーのオッズですが、現時点のStake.comでは
- ペレイラ 1.59倍
- イリー 2.37倍
となっています。
思ったよりも競ったオッズですが、やはり1度目の試合でも勝利している現王者のペレイラが有利と見られていますね。
アレックス・ペレイラvsイリー・プロハースカの視聴方法は?
鶴屋怜vsヘルナンデスの試合はYoutube、UFCファイトパス、U-NEXTのいずれかで観ることができます。
詳しい視聴方法については以下の記事からどうぞ。
アレックス・ペレイラvsイリー・プロハースカ 勝敗予想
さて、個人的な勝敗予想ですが、
ペレイラの中盤KO勝ち
にしておこうと思います。
イリーは大好きで応援していますが、やはりペレイラは相性が悪すぎるなと。自身の打たれ強さを全面に押し出し、両手を下げた構えのイリー。他の選手にはこの構えで通用していましたが、ペレイラは一発の破壊力が尋常ではないので、今回もどこかでもらって倒れてしまう気がします。
しかも今回の試合は2週間前のショートノーティスなのでペレイラ対策はできていないでしょうし、そもそもイリーの性格上、ペレイラ相手でもファイトスタイルを変えてくるとは思えません。
もしイリーが勝つとしたら、うまくスイッチしてカーフキックを蹴らせないようにしながら、タックルやタックルのフェイントから打撃を当てていくパターンですかね。個人的には、前戦の2Rで見せていた、ペレイラの手首を掴んで中に入っていくやり方もかなり有効な気がします。自分よりリーチの長い相手に慣れていないペレイラは、かなり嫌そうにしていました。
ただ、ライトヘビー級に上げて過度な減量から解放されたペレイラはミドル級の時より打たれ強さも増しているような気がするので、イリーの攻撃力といえど簡単に効かせられるイメージがわきません。やはり何度考えても相性的に厳しい気がしてしまします。
予想はペレイラですが、イリーがいい意味で予想を裏切ってくれることを期待しています。
試合はU-NEXTかUFC Fight Passで見ることができるので、みなさんぜひこの試合を楽しみましょう!
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