日本時間6月8日(土)9時ごろに開催されるONE167。
この大会で、先日K-1を抜けてONEに移籍したキックボクサー野杁正明がデビュー戦を行います。
相手はフェザー級ランキング3位のシッティチャイ・シッソンピーノン。正真正銘の世界の強豪との対戦です。
この記事では、そんな野杁正明vsシッティチャイの見所解説、勝敗予想をしていきたいと思います。
選手紹介
まずは両選手の簡単なプロフィールから。
野杁正明
- 身長175cm
- 31歳
- 60戦49勝25KO11敗
- オーソドックス
- 第2代K-1 WORLD GPウェルター級王者
- 第2代K-1 WORLD GPスーパーライト級王者
経歴
小学生の頃いじめられていた野扖選手は、空手をやっていた兄の友人にいじめから助けてもらったことがきっかけで空手を始めます。初めての試合では、女の子にボコボコにやられ、それが悔しくて練習を続けたそうです。
その後徐々に頭角を表し、高校1年生の頃にはHIROYAを倒してK-1甲子園優勝。初の1年生チャンピオンとなりました。この頃から怪物と呼ばれ始めます。(私の記憶では井上尚弥選手より怪物と呼ばれるのは早かったような…)
プロ転向後はKrush、K-1に参戦し、”狂拳”竹内裕二、卜部兄弟、久保優太らと激闘を繰り広げると、2013年にはGLORY(当時キックボクシングで世界一の団体)の日本大会にも出場するなど活躍の場をさらに広げました。
2016年にK-1 WORLD GP -65kg世界最強決定トーナメントに出場するも、準決勝でゲーオに判定負け。しかしその翌年にはK-1 WORLD GP スーパーライト級(-65kg)タイトルマッチにてゲーオにリベンジ。K-1王座に輝きます。
2018年からはウェルター級(-67.5kg)に転向。転向初戦で松岡力にKO勝ちするも、転向2戦目ではジョーダン・ピケオーにフィジカル差を感じさせる内容で判定負け。
その後は外国人選手相手に連勝を重ね、2021年にK-1 WORLD GP第2代ウェルター級王者決定トーナメントに出場。1,2回戦を1RKOで勝ち進み、決勝では安保瑠輝也に悶絶ボディでKO勝ち。ウェルター級でも王座を獲得し、K-1 2階級制覇王者となります。
2022年にはTHE MATCHに出場するも海人に延長判定負け。
(後に1Rで右拳が折れていたと発覚)
その後は70kgへの階級アップを目指し、K-1で外国人選手相手に69kgや69.5kgなどのキャッチウェイトで対戦。1R KOで圧勝するも、どこか歯応えのない試合が続き、K-1では敵無しとなっていました。
そんな中、突如K-1との契約終了、ONE Championshipへの移籍を発表。しかも70kgでの試合で、デビュー戦はいきなりランキング3位のシッティチャイ。
ONEの70kgキックボクシングはここ数年世界のトップどころが集まって鎬を削っていて、間違いなく今全団体・全階級合わせて一番レベルが高いです。その中に階級を上げた日本の怪物・野杁正明がどこまで食い込めるのか。本当に痺れます。
特徴
選手としての特徴は、固いブロッキングと、殺傷能力の高い攻撃です。
日本人の中でも抜群のフィジカルを誇る野扖選手は、一見細身ですが体幹が強く、ブロッキングがめちゃくちゃ固いです。その固いブロッキングで前に出てプレッシャーをかけ、殺傷能力の高い攻撃で相手を仕留めます。
元々は蹴りが得意な選手だったのですが、最近はパンチ技術にも磨きをかけており、特に左ボディ、左フック、右ストレートのキレと破壊力は素晴らしいです。一発一発が相手の急所を正確に打ち抜く打撃は見ていて惚れ惚れします。
本人曰く、「ボディで倒すのが好き」だそうで、元いじめられっ子とは思えないくらい試合中の殺気が凄まじいです(笑)。
シッティチャイ・シッソンピーノン
- 身長174cm
- 32歳
- 168戦128勝39KO35敗5分
- サウスポー
- 元GLORYライト級王者
- 元ルンピニースタジアムウェルター級王者
- 現ONEキックボクシングフェザー級3位
経歴
シッティチャイはタイ人で、世界トップクラスのムエタイファイター、キックボクサーです。
170戦近い戦績を誇る彼は、11歳の頃に初めての試合し、そこからムエタイでキャリアを築いていきます。
2014年にルンピニースタジアム(タイの2大スタジアムの一つ)でチャンピオンになると、その後中国のKunlun Fightや武林風、そしてイギリスのGLORYなどのキックボクシング団体に参戦。これら全ての団体でチャンピオンになります。
特にGLORYでの実績は凄まじいです。GLORYといえば間違いなく当時世界で一番レベルが高いキックボクシング団体。そこの70kg以下でチャピオンになり、6度の防衛に成功しています。
しかも防衛戦では、日本のK-1にも参戦していたマラット・グレゴリアン相手に2度勝利。チャンピオンになる前にもグレゴリアンに2回勝っているので、これでグレゴリアンとの対戦成績を4勝0敗とします。
しかしグレゴリアンとの5度目の対戦で判定負け。GLORYの王座を失ってしまいます。
2020年からONEに移籍。(当時のONEは70kgの世界的に有名なキックボクサーを集めまくっており、結果的に70kgで一番レベルの高い団体がGLORYからONEになりました)
ONEではスーパーボン、タワンチャイ、タイフーン・オズカン、ダビット・キリア、チンギス・アラゾフなどの世界トップレベルの強豪たちと対戦。スーパーボンやアラゾフには惜しくも負けていますが、現在のところONEでの戦績は5勝4敗と勝ち越し。ランキングも3位につけています。
直近では、先日日本で開催されたONE165に出場。武尊vsスーパーレックのアンダーカードでグレゴリアンと6度目の対戦。この試合では終始グレゴリアンのプレッシャーに下がらされ、3Rに左ボディでKO負けしてしまいます。シッティチャイが倒されるのを見るのは初めてで、衝撃でした。
今回の野扖選手との試合は、このKO負けからの復帰戦。インタビューでも、「勝ってもう一度世界有数のファイターになりたい」と話すなど、やる気は十分です。
特徴
シッティチャイはムエタイとボクシングのテクニックを高いレベルで融合させたハイブリッドファイターです。
ムエタイ出身らしく、距離の取り方やディフェンス、蹴りはもちろん素晴らしいですが、パンチの技術もあり、本当に強い選手です。
最大の強みはなんといってもあの左ミドルキック。モーションがほぼない上に非常に強烈で、相手の前進を止めたり、右腕にダメージを与え使えなくしたりと色々な使い方をしてきます。グレゴリアンも初期の対戦ではシッティチャイの左ミドルにかなり苦戦していました。
さらに左ミドルのフェイントから左ストレートや左の膝蹴りをつなげてくるなど、攻撃のパターンが多いのも特徴です。
また、前の手の使い方も上手く、内側から刺してくるジャブやアッパーも厄介です。あそこまで上手に前の手を使えるあたり、単なるムエタイ戦士ではなく、ボクシング技術も高いなと思わされます。
自分の距離とリズムで戦えると誰も勝てないくらい強い反面、グレゴリアンやアラゾフなど圧倒的な攻撃力と圧力を持つ相手からガンガン攻められると脆さを見せることもあります。
↓ダビット・キリア戦。個人的にONEでのシッティチャイベストバウトです。
↓直近のグレゴリアン戦ではKO負け
見所解説
野扖の構え(オーソドックスか、サウスポーか)
この試合でまず注目したいのは、野扖選手の構えです。
基本的にはオーソドックスですが、サウスポーでも何の問題もなく戦える野扖選手。今回はシッティチャイ相手にどちらの構えで来るのかに注目です。
個人的な予想では、おそらく最初はオーソドックスで構えると思いますが、途中要所要所でサウスポーを混ぜてくる気がします。
なぜなら、オーソドックスだとサウスポーのシッティチャイと前の手同士がぶつかって距離が遠くなるのに対し、サウスポー同士だと距離を詰めやすいから。
中距離〜遠距離だとシッティチャイに分があるので、野扖選手は距離を詰めたいはず。そうなるとサウスポー構えも要所で使ってくるはずです。
実際、試合前の公開ミット打ちではサウスポーの練習もしていました。(動画2:00頃〜)
まずは野扖選手の構えに注目です。
野扖の体幹vsシッティチャイの左ミドル
次に注目したいのは、野扖の体幹vsシッティチャイの左ミドルです。
距離を詰めていく野扖に対し、シッティチャイは確実に左ミドルを蹴ってコントロールして来ようとします。この左ミドルは非常に強烈で、これで体幹をブラされてしまうと距離を詰めて攻撃することができなくなり、どんどんシッティチャイにペースを握られてしまいます。
反対に、直近でシッティチャイに勝利したアラゾフやグレゴリアンは左ミドルをもらっても全く体勢を崩すことなく、すぐにパンチや蹴りを返してペースを取り返していました。
このように、シッティチャイに勝つにはとにかく左ミドルを対策し、もらっても体幹をブラされず攻撃を返すことがほぼ必須と言っていいでしょう。
65kgや67.5kgでは抜群のフィジカルと体幹力を誇っていた野扖ですが、70kgに上げて初めての試合で、シッティチャイの左ミドルをもらって体幹をブラされずに攻撃を返せるのか。
70kgでもこれまでと変わらないフィジカルを発揮し、左ミドルの後に攻撃を返せるならシッティチャイにも勝つ道筋が見えてくるでしょう。反対に左ミドルで体幹をブラされて攻撃を返せないようだと、3R何もできずに終始コントロールされても全く不思議ではありません。
シッティチャイ最大の武器である左ミドルに、野扖がどこまで対応できるのか、ここがこの試合最大の注目ポイントです。
↓シッティチャイvsアラゾフ。左ミドルをもらってもすぐ右ストレートを返すアラゾフが印象的です。
中に入りたい野扖vsアッパーと膝で迎撃したいシッティチャイ
仮にシッティチャイの左ミドルを攻略し、距離を詰めて中に入れたとしても、その後もシッティチャイは対応策を用意しています。
それが膝蹴りと近距離でのアッパー。
近い距離で相手の体勢を崩してからの膝蹴りはムエタイ出身らしく相当厄介で、そこにボクシング的なアッパーまで混ぜてくるので、中に入ってからもなかなか厳しい戦いを強いられそうです。
特に野扖選手の構えはガードを固めて若干前傾姿勢なので、膝蹴りとアッパーをかなりもらってしまいそうです。(実際、かなり前ですがK-1でマサロ・グランダーと最初に試合した時は膝蹴りでカットしてTKO負けしていました。)
中に入った後の膝とアッパーにも対応しつつ、連打をまとめられるのか。ここに注目です。
個人的には、インローを強く蹴ってシッティチャイの体勢を崩してから中に入れればなんとかなるのではないかなと思います。これまでの試合、特にグレゴリアン戦なんかを見ても、シッティチャイは意外にもインローをカットできずまともにもらうことが多いので、インローがこの試合の野扖選手の生命線になる気がしています。
勝敗予想
この試合の個人的な勝敗予想ですが、
シッティチャイの判定勝ち
にしておこうと思います。
シッティチャイが苦手とするのは、
①自分より体格が大きく
②攻撃力があり
③積極的に攻めてくる
選手です。
野扖選手はシッティチャイと同体格で、70kgに上げて初めての試合なので攻撃力も未知数。そして手数は多いとはいえない選手なので、相性的に厳しい気がしています。
また、久保優太戦やゲーオ戦を見ても、野扖選手はサウスポーが苦手なのかな?という印象があります。
シッティチャイは直近2連敗中と言えどまだまだ実力は世界トップクラスのはずで、グレゴリアンと6度対戦した経験もあるので、野扖選手のプレッシャーに圧倒されるイメージがなかなか湧きません。かなりの時間、ジャブと左ミドルでコントロールされそうな気がします。
ただ、それでも1,2度は距離を詰められるチャンスが来ると思うので、そこをモノにできるかどうか、ですね。予想はシッティチャイですが、応援は野扖選手なので、接近戦になった時にコンビネーションをまとめてボディで倒し切って欲しいです。
いずれにせよ、非常に楽しみな一戦です!試合はU-NEXTで見ることができます。
※本ページの情報は2024年6月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにて
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